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猫を抱いて象と泳ぐ

2009–06–24 (Wed) 02:29
猫を抱いて象と泳ぐ猫を抱いて象と泳ぐ
(2009/01/09)
小川 洋子

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数奇な人生を送った、小さな天才チェスプレイヤー、リトル・アリョーヒン。八×八のちっぽけな盤の上で、彼は思慮深い猫のポーンや心優しい象のインディラと共に、チェスという広い海を旅する。人々を惹きつけて止まない、彼の密やかでせつないチェスの音色。息をのむほどの静謐さ。チェスに人生を捧げた、リトル・アリョーヒンの物語。


小川洋子の書く世界というものは、どうしてこうも言葉のひとつひとつが美しいんだろう。

まっしろなんですよね。
穢れがないというか。
大事に宝箱の中にしまっておきたくなるような、そんな言葉たちで物語が紡がれている。
読み終わった後も、ふわふわした余韻がいつまでも残る、そんな幸せな読後でした。

この人の文章は、何気ないものを芸術品に変える力がある。
チェスの駒ひとつひとつの説明が、すでに素晴らしい。
はじめに書いてあるので、本屋でそこだけでも読んでみてください。
それに心惹かれた人は、本編を読んで失敗はないです。


「泳ぐ」という題名にふさわしい浮遊感と不安定さがありました。
奇妙な唇をもった少年、
壁から出られなくなった少女、
太りすぎて回送バスに閉じ込められたマスター、
大きすぎて屋上から降りられなくなったインディラ。
誰もかれもが特異性を持っているんだけど、それが全くマイナスとして映らない。
なんだかその「人と違う何か」があるからこそ、誰よりも自由でいられる感じ。

彼らは一歩一歩地に足つけて前に進むのではなく、
ゆったりと自由に泳いでいる。



老婆令嬢にチェスを教えているとき、涙が出そうになりました。
すべてを失っても、老婆令嬢は相変わらずルークを愛していて。
「初めてチェスを教えてくれたのが、あなたでよかった。」
のセリフで、ああ、やられた、って思いました。

彼らが自由にチェスで世界へ旅立つように、
あるものの高みにいるからこそ感じられる喜びというものに、とても憧れます。
いったいそれを感じるには、どれほどの時間を積み重ねればいいんだろう。

勝負であって勝負でない。
相手と共に素敵な音色を響かせ、ひとつの棋譜を作り上げるというその芸術性に惚れ惚れ。



なんか感想らしいことちゃんと書けてない気がしますが…。
ぜひこの空気感は実際に読んで感じてほしいです。

水に潜ったときのような感覚。
喧騒から遠のいて、ぼわぼわとした水の流れの音だけが聞こえる世界。
ときどき見える光の筋が、とてもきれい。
いつまでもたゆたっていたい、そんな気分になるお話でした。


うん、とりあえず、チェス、やりたいです(笑)



読了日:2009/6/17
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コメント

静かさと美しさに、つつまれているような作品でしたね。
深いチェスの海に潜り、自由に泳いでいくリトル・アリョーヒン。
果てしのないその世界を旅していく様子が、素敵な空気感に満ちていました。

>藍色さん
慎ましくて、穏やかな安心感のあるお話でしたよね。
ファンタジックな雰囲気があるんですけど、世界のどこかでは彼らみたいな人が実在しているんじゃないかって思いました^^
勝ち負けにこだわらずにチェスを指すその姿に、チェスに対する真摯な愛を感じました。

こんばんわ。カキコありがとうございました。
爽さんがこの作品をアップしたの知っていたのですが、記事を書いた時点で力尽きて寝てしまいました^^;
今日お伺いしようと思ってました。

テレビで評判になっているのは知っていましたが、本当に良かったです。
小川さんの作品は2冊目でしたが、あったかくて本当に純粋ですよね。
マスターも老婆令嬢もミイラもおじいちゃんもおばあちゃんも弟ももちろん少年も本当に素敵でした。
最後が切なかったです。
私もチェス、したいです。
ルールは全く知らないのですが^^;

>苗坊さん
こちらこそいつもコメントありがとうございます♪
そしてこまめにのぞいてくださってありがとうございます!気が向いたときに来ていただければ、いつでも大歓迎ですので^^

小川作品はほんとに癒されますよね~。
でも過去の作品はもっと生々しいものも多いみたいです(゜-゜)
『博士の愛した数式』『ミーナの行進』そしてこの作品と読んできた私はいまいちイメージできないです(笑)

ついつい老婆令嬢やミイラたちのことで頭がいっぱいになってしまいますが、リトル・アリョーヒンの家族たちもすっごく素敵ですよね!
リトル・アリョーヒンはなんというか、型にはまらない人でしたけど、それをじっと見守って受け止めてあげられる家族の存在があったからこそ、彼は彼のままでいられたんだろうな、って思います。

チェスやっぱりやりたくなりますよね!
一緒にこれから覚えて、いつか郵便チェスとかできたら面白いですよね(笑)

爽さん こんにちは♪
こちらに来るのが遅くなってしまい申し訳ありません。(汗)
この本は素晴らしすぎてどうやって感想を綴ろうか非常に悩ましく難しかった本でした。どう書いてもこの魅力が上手く伝わるような気がしなくて。(^^;
爽さんの言われる通り、真っ白で穢れのない物語という感じでしたよね。そして芸術品のような美しさも持っていて。
作中何度も悲しいことが起こりますが、それでもリトルアリョーヒンはきっと自分の人生を振り返って幸せだったと感じるだろうと思うから読後感も温かい気持ちになるのでしょうね。

小川作品はまだ5作品程度しか読んでいないビギナーですが、最近エッセイや書評集を読んでますます小川さんのお人柄に惹かれてファンになりました。
未読の小川作品をどんどん読んでいきたいなぁと思いました。(^^)

>板栗香さん
いえいえ、こちらこそ返信遅くなってすいません(>_<)
あ~、わかりますその気持ち!この本の文章全体が素晴らしくて、どう頑張って伝えようとしても、零れ落ちていってしまう魅力がある気がします。もう、いいから読んでみて!って言いたくなります(笑)
哀しいことも、幸せなことも、チェスがなければ経験しなかったことばかりなんですよね。ひとつのことにこれだけ自分を捧げることが出来たのは、とても幸せなことだなって思いました。このせつなくも温かな読後感は、ひとつのものを貫き通したからこそ滲み出てくるものなのかな、思います^^

私も小川作品はあまり読んでいないビギナーです(>_<)中にはわりと怖いものもあるらしいと聞いたのですが、私もこれから色んなジャンルの「小川洋子」を読んでみたいなぁと思っています^^

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伝説のチェスプレーヤー、リトル・アリョーヒンの密やかな奇跡。 触れ合うことも、語り合うことさえできないのに… 大切な人にそっと囁きか...  …

「小川洋子  猫を抱いて象と泳ぐ」

伝説のチェスプレーヤー、リトル・アリョーヒンの、ひそやかな奇跡を描き尽くした、せつなく、いとおしい、宝物のような長篇小説。私は子供の頃に大好きな祖父から将棋を教えてもらって少しやっていた事があります。詰め将棋とか少しやってみたりもしたけれど、あまり向い...  …

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