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私の男 桜庭一樹

2008–05–24 (Sat) 11:32
私の男私の男
(2007/10/30)
桜庭 一樹

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おとうさんからは、いつも、雨の匂いがした…。家族を失った花は、親戚の腐野淳悟(くさりの・じゅんご)に引き取られた。ずっとひとりぼっちだった花。家族の温かみを知らずに育った淳悟。二人は互いに奪い、奪われながら、15年間片時も離れずに過ごしてきた。私は、おとうさんから、淳悟から、私の男から、離れることが出来るのだろうか…?第138回、直木賞受賞作。

新世界より」の後にこれを読むという、地の底まで沈みたいと思ってるとしか思えないチョイス。
結果、また「ぐるぐる症状」(考えすぎてオーバーヒート寸前)が発症してます。
懲りないなー(苦笑)
個人的には「赤朽葉家の伝説」のほうが好みなんですが、これも良かったです。
ちょっとね、読むのがキツイ表現とかあったんですが…なんとかなりました。

花が結婚するシーンから始まって、花が引き取られるシーンまで逆行する形で物語が進みます。
それがなかなか上手いなぁって。
第一章では、すごく古ぼけた印象。カタカタ動く、古い映写機でコマ送りするようなレトロ感。
でも逆行するにしたがって、背景がどんどん鮮やかになっていって、動きがスムーズになっていくような気がしました。時代は古くなっているのに、どんどん鮮やかになっていくのが面白い。
お互いに、いろいろなものを奪ってきた結果なのかもしれない、と思いました。

そんなわけで、全部読んだ後、今度は章を逆行していくと、また面白いです。
特に、1章の花と淳悟の言葉一つひとつの重さが、全然違う。
ただ謎だった言葉が、しっとりとした重さを持ち、絡み付いてくるような感じでした。

花が囁く、「おとうさぁん…」という声の甘さ。
麻薬のような、蠱惑的な響き。
その一言がなければ、立ち止まらずに、ただの一場面として過ぎていったところがたくさんある。
この言葉で、花が小さな少女であることを思い出した。
そして同時に、小さな女の体に秘められた、人ではない、「なにか」を見た気がする。

桜庭一樹は、「少女の残酷さ」を書いたら、すごいですね。
あとは、「美しさの持つ凶悪さ」とか。
この閉じられた空間から生まれる、息苦しさ、結構好き。

あと「よぅく」とか「すこぅし」とかの表現が、独特で、すごく桜庭一樹だなーって思いました。
「お父さん」と「おとうさん」の違いみたいに、ひらがなと漢字の使い分けをしている文体が好きです。
文章という書き言葉を大事にしている気がして。

父と娘。
血のつながり。
そして、「血の人形」。
花と淳悟の関係は、異常だ。むしろ狂気といってもいいんじゃないかと思うんですが、それが、どうして嫌悪に繋がらないのだろう。
読後に押し寄せてきたのは、どうしようもない切なさでした。

共感するべき物語ではない。
堕ちていく二人の姿をただ黙って、ひっそりと見つめていく。
そんな話だなぁ、と思いました。

読了日:2008/5/22

あと、ネタバレだけど書きたいので追記。
話の核心なので…。


淳悟の「お……」がなんなのか、読みながらずーっと考えてました。
「俺の女」「おかあさん」「俺のもの」のどれかかな?と思ってたので、当たってちょっと嬉しかったです。
それだけなんですけど(笑)私勘悪くてこういうの最後まで当たらないので、珍しいので書いちゃいました。
しょーもなくてすいません(^_^;)
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コメント

こんばんは。
読み応えありましたね。
すごい勢いで引きずり込まれた印象でした。
正面から挑むには難しいテーマであるにも関わらずここまで描ききるなんて、さすが桜庭さんという感じです。
淳悟の「お……」は、予想通りでした。

藍色さんこんばんは~。
ほんと、どこかで辛くなって、止まってしまってもおかしくないようなテーマなのに、最後まで読ませるところがすごいです。
すごくシンプルで静かな文体なのに、不思議と引き込む引力がありますよね。

予想通りでしたか~。さすがですね!私は結構迷ってこれなので(笑)だから推理小説とか苦手で。犯人とか最後まで絶対分からないので、ある意味すごく安全な読者です(笑)

私も読み終えてから第1章を読み返して、言葉の重さだとか、隠されていたことに気づいて、愕然としたりそうだったんだ・・と納得したりしました。
桜庭さんは、「お父さん」と「おとうさん」の書き分けにしても、ほんとうまいですよね。たったそれだけの違いなのにまとう空気が変わってしまいますから。

すっかりお返事が遅くなってしまってすいません。コメントありがとうございます☆

読み返すと感慨深いですよね。会話の一言ひとことに立ち止まって、その重さを確かめながら読んでました。

>たったそれだけの違いなのにまとう空気が変わってしまいますから
ほんとにそう思います。なんていうかこういう表記のしかたって日本語しかできないので、すごくいいなって思うんです。文章全体で世界観を伝えてくれる感じがよくて、そういうふうに書いてくれる桜庭作品にとても惹かれます(*^_^*)

爽さん、こんばんは!
コメントとTBをいただいておりましたのに、お返事が遅れてしまいました。ごめんなさい。
ここ最近は読書もさっぱりで日々ただただ慌しく過ぎていくだけなのですが、こういうとき立ち止まって活字を読むと落ち着くのですよね(私の場合)。
ちょうど今桜庭さんの文章を読みたくて仕方なくて、積んである『赤朽葉家の伝説』を読もうか、新刊の『荒野』を読もうか思案しています。

『私の男』圧巻でしたよね。そうしてやりきれない気持ちでいっぱいになります。
読み終えて時を経てもなお余韻が色濃く残っています。それだけものすごい吸引力で惹かれたのだな、と改めて思います。

リサさんこんばんは~^^
とんでもないです、コメントありがとうございます♪
本が読めない生活が続くと辛いですよね~(-_-;)禁断症状出ませんか?(私だけ?笑)
私の場合は、大学入ってから通学電車の中で読書するのが習慣になったので、どんなに忙しくても、電車の中だけは本を読む!というマイルールを作っています。そのおかげで忙しくても平常心でいられるようになりました(笑)
「赤朽葉家の伝説」、おすすめです!どっぷりと桜庭ワールドにハマりたいときにちょうどいい本だと思います^^「荒野」は私も気になってまして…早く読みたいです。図書館で予約してこないと!(←買う気ゼロ)

圧巻でしたね!
何が正しくて何が間違っているのか、答えははっきりしているのに、なんだかそれを認めたくない気持ちになりました。
そして、引き込まれますよね、この作品。閉じている世界をゆっくり見守るという、このもどかしさで最後まで引っ張られていった気がします。読み終わったとき、今後の花の人生を見たくないような、見たいような…、そんな不思議な気持ちで、色々悶々と考えてしまいました。

こんばんわ。TBさせていただきました。
圧巻でした。ずしっと来ますね。
しばらくこの余韻が残りそうです。
2人の愛は間違っているとは思うのですが、家族の愛に飢えていた2人にとって、これが家族愛なのかなと思ったり。。。
これからの花の人生はどうなるのでしょう。気になります。
今度は6章から順に読んでいきたいですね。

>苗坊さん
こんばんは!
TBなんですがどうも届いていないみたいです…。よろしかったらもう一度送っていただけますか?

まさに…「圧巻」ですよね。
重いというか、心の奥深くにずんと乗っかってくる感じでした。
間違っているのを認めたくないんですよね、なんだか(>_<)主人公の気持ちに簡単に引っ張られてしまうので家族愛ってああいうものではないってわかってるんですが、あの二人を見ているとそれがキレイなもののように見えてしまって…。

花は今後なににすがって生きていくのでしょう。
花はもう多分一人でしっかり立って生きていけないと思うんです…。
ずっと閉じた世界にいたからこそ、今度は幸せに、生きていってほしいなーってすごく思います。

6章から順に読んでいくと、はじめの章での二人の会話の重さの違いにびっくりしますよ^^
この本、1度は逆行読書をおすすめします☆

爽さん こんばんは
圧倒的な文章文体と小説的構成力の前に脱帽です。でも私的には物語には馴染めませんでした 苦笑

>yoriさん
こんばんは^^
桜庭的雰囲気といいますか、とても独特な雰囲気がありますよね。ライトノベル出身だからかどうかわかりませんが、言葉の選び方も特徴的だなって思います。
テーマがテーマですし、結構好き嫌い分かれますよね(>_<)基本的には私もこういう話はダメなほうなんですが…これがどうして大丈夫だったのか自分でもよくわかりません(^_^;)

こんにちは~ご無沙汰しております。なかなかまとまった時間がとれなくて、こちらにくるのがすっかり遅くなってしまいました。(汗)

私は『赤朽葉家の伝説』が桜庭作品の初読みで、この本が2冊目でした。
なんか圧倒されすぎてしまって上手く感想がまとまらない本だな~という印象が強いです。(苦笑)
2人の結びつきの強さ、愛の形に圧倒されました。世間的には決して許される関係ではないのでしょうが、読んでいるとそんなことはどうでもよくなってきましたね~
欠損という言葉がとても印象的でした。

>板栗香さん
ご無沙汰しております!
いえいえ、お忙しい中訪問ありがとうございます^^

両方とも重い作品ですね。
個人的には『赤朽葉家~』のほうが好きなのですが、両方とも圧倒される、大きな流れを持っていますよね。
いつの間にかこの「間違った」関係を全力で応援している自分に気づきました。決してこういう関係を肯定しているわけではないのに…不思議です。
桜庭さんの使う言葉はいろいろ印象的なものが多くて、文章の雰囲気だけで楽しめるような気がします^^

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