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八日目の蝉 角田光代

2008–02–16 (Sat) 00:58
八日目の蝉八日目の蝉
(2007/03)
角田 光代

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不倫相手の子どもを誘拐し、逃亡生活をはじめた野々宮希和子。産むことが叶わなかった我が子を重ね、過去を振り捨て、財産を手放してでも、私はこの子の母親でありたかった・・・。当たり前のように受け入れいれている「家族」という枠組みについて、改めて考えさせられる作品。

あー、この作品、色々ぐるぐる考えちゃって、上手く感想が書けなかったんですよ。
ここに書くほかに、自分だけのための読書記録を別につけているのですが、それを書くのがほんとうに大変でした。ファーストインプレッションを大切に、読後一番に書く感想で、いつもは1回でがーっと書いてしまうのに、この作品は書き直しました。ムリヤリひねり出した言葉があまりにも自分が思っていることと違ったので・・・。
今は落ち着いて、やっと言葉が見つかった感じです。


序章でおきる誘拐事件。
1章では希和子の逃亡生活が、2章では誘拐された薫(恵理菜)が大人になってからの話が書かれます。

角田作品はこれでやっと3作目くらいなので、新境地かどうかはわからないんですが、でもものすごい気迫が感じられる作品だと思います。

希和子と薫は全く血のつながりはない。
なのに、希和子は間違いなく薫の母親だった。
血のつながりはあるのに接し方がわからず、母親らしく振舞えなかった恵津子が、それでも恵理菜の母であることが間違いないのと全く等しく、希和子は母だった。

母親になるということは、一体どういうことなのだろう。

母になるということは、とても大きなとらえ方をすれば、「守ること」なのではないかと思う。
この子の苦しさを取り除いてあげたい。
少しでも楽しくいられるようにしてあげたい。
よく、尽くすタイプの女の子が「お母さんみたい」とかって言われるのって、このあたりが原因ではないかと思うのですがどうなんでしょうね(笑)

もし、自分の子供が将来誘拐されてしまったら、と想像してみる。
希和子のしたことは到底許すことができないし、自分の子が全く関係のない女のことを正真正銘の「お母さん」だと思っていた過去があるなんて、恐ろしくて気が狂いそうになる。嫌というより、おぞましいのだ。自分と確かに繋がっているはずの子どもの中に、自分が共有できないものがあることが。憎い女がわが子の心の中に巣食ってることが。

希和子と薫の逃亡生活は、微笑ましい。
でも私には、この生活がずっと続けばいいなんて思えなかった。
どうしても。

それはきっと私自身がまだ「親」より「子」の思考の持ち主だからだと思う。
もし今、一つ屋根の下に住んでいる私の母が、本当は全くの他人だったならば?
読みながらそんなことがちらついて、そして今の生活がきっと幸せだからこそ、薫のその後を想像して苦しくなった。
もうやめてくれ、と。
たとえもう取り返しがつかないにしても、もう前に進むのはやめてくれ、と。
ずっとそう思って読んでいました。

”どうして、私だったの?”
自ら選択したわけでもなく、勝手に運命をゆがめられ、「八日目の蝉」になってしまった薫こと恵理菜。
そんな彼女が、八日目より先も生きていこうと決意したきっかけは、皮肉にも憎むべき相手・野々宮希和子と同じように、崩れそうに柔らかく、でもとても強かな小さな命がもたらしたものだった。

壮絶で辛い出来事なのに、あんなに希望のある明るいラストがある。そこに、母の偉大さを感じる。
親になったとき。子どもを授かったとき。もう一度読みたい本です。

読了日:2008/2/13

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コメント

たしかに、薫の立場で読むと同じ景色も変わって見えますね。
希和子が根っからの悪人でないだけになおさらかもしれません。
ラストの漲るほどの明るさには、だからこそじんとさせられました。

ふらっとさん、コメントありがとうございます♪
確かに、希和子は悪人どころかある意味では被害者でもあるんですよね・・・。この話、どんな立場でどんな視点から見るかによって解釈が180度違ってしまうので、なんか結論が出なくて困っています。
ラストシーン、よかったですよね!改めて、愛情とか、絆とか、大事にしなくちゃ、って思いました。

薫の目線で読むことで違った見方ができるってわかって、興味深かったです。
事件に自分の人生を翻弄されながらも、必死に向かい合う薫。
最後にふたりが気づけなかったのは残念でしたけど、薫が前向きに変われてよかったって思いました。

藍色さん、こんにちはー☆
なんというか、希和子がしっかりと薫の母親だったからこそ、こういう葛藤が生まれてくるのかもしれない、と思いました。一時でも、薫は希和子のことを本当の母親だと思っていたからこそ、のちに恵理菜の心に溝が出来たのかな、と。
でも、恵理菜がまっすぐ前を向いて歩いていく姿には、素直によかったなぁと思えますよね。
今までどこに向かうかわからなかった未来が、はっきりと示された瞬間に、まだ希望はあるって思えました。

爽さん、こんにちは♪
お伺いするのが遅くなってごめんなさい。
本当にぐるぐるといろんなことを考えさせられた作品でした。
母親の立場でどうしても読んでしまいましたが、薫の立場の部分ではその分ハッとすることが多く、希和子の身勝手な行動が薫に多大なものを科してしまったことに改めて痛い思いがしました。

ラストが気になりましたが、とても良かったですね。
希望が持てました。

リサさん、こんにちは☆
こちらこそお返事が遅くなってしまってすいません。
どの立場から読んでも、どこでどうすべきだったのかがわからなくて、もんもんとしてしまいました(>_<)
まだ私は希和子サイドから話を読むことは出来ないのですが、女という生き物がもつ「母性」の強さ・怖さはなんとなくわかるような気がします。

どんなときも、新しい命は希望の象徴ですよね。
あの輝きは、ほかの事では代用できない強さを持っていると思いました。

爽さん、こんばんわ。
薫の視線というのは、読みながら全く考えなかったので、爽さんの記事を読んでハッとしました。

そして、
>自分の子が全く関係のない女のことを正真正銘の「お母さん」だと思っていた過去があるなんて、恐ろしくて気が狂いそうになる。嫌というより、おぞましいのだ。
って全くその通りです。なのに親の視線で読んだはずなのに、そこがぽっかりと抜け落ちてしまっているのが自分でも不思議で・・。子供をさらわれた親の視点がなかったから、単純に希和子に感情移入しちゃったみたいです。
でも辛い物語の最後に明るさと希望があったのは本当によかったと思います。

>juneさん
こんばんはー^^
自分の気持ちがまだ子供に近いからなんでしょうね~(^_^;)たぶん子供を持ってから読んだら感想変わると思います。

希和子に感情移入するかしないかでだいぶ印象変わりますよね。私は希和子の気持ちが最後まで理解できないまま、読みきった感じがありまして…。
子供にとって、母親って無条件に信頼してしまう存在だし、どうしても裏切れない存在ではないかって思うんです。でもこういう状況って、その手放しで信じているものを根元からひっくり返されるかんじだと思うんですね。
その危うい感じがとても怖くて、我慢できなくて。

このまま後味悪く終えられてしまったら、しこりになって残ってしまいそうですよね…。本当に安心できるラストでよかったです。

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