千里眼奥様と呼ばれた祖母・万葉(まんよう)、レディース総長で後に有名な漫画家になる毛毬(けまり)、そして何者にもなれない瞳子(とうこ)。戦後のあわただしい世、高度経済成長の波、そして現在へと流転する社会を背景に、あるひとつの旧家の女たちと、それを取り巻く一族の生き様を堂々と書いた雄編。
直木賞とっただけあって、今世間では桜庭一樹ブームですねー。
初めて読んだ桜庭作品は「少女七竈と七人の可愛そうな大人」なんですが、それ読んだころにはまさか直木賞取るとは思いませんでした(笑)
「私の男」はもちろんのこと、これも候補だったんで注目されてて、しばらくは読めないかなぁ、いつ読めるかなぁ・・・と悶々としてたんですが、なんとか学校で借りれました。よかったよかった。
「少女七竈~」がすごいよくて、「
砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」が結構辛くて、2作が全く逆の振れ方をしたので桜庭作品の評価が定まらなかったんですよ。
で、今回。
今回は引き込まれました。
2段組にあの厚さ、一体どれくらいで読み終えられるのかと恐れ慄いてましたが、わりとすらすら読めました。
勢いにのってとんとん読むことも可能だったんですが、なんかそんなふうに軽く読んではいけないような雰囲気があったように思います。流れていく時の流れの重さに、たった20年ほどしか生きていない私は、圧倒されました。
ファンタジーのようでありながら、でもノスタルジックな雰囲気で、私にとっては実感のない神話の時代から現代へとリンクしていくことに、とても不思議な気持ちになりました。
本の中の出来事だと思っていたことが、いつのまにか現実になっていたという、感覚。
もはや物語ではない。
約半世紀の時間を圧縮した、時そのもの、歴史そのもの、人生そのものを閉じ込めたという感じです。
話は、空飛ぶ一ツ目男の未来視から始まり、落ちゆく隻眼の職工の姿で幕を閉じる。
それは一気に飛躍し、そして今また低迷する日本経済の姿を揶揄しているのかもしれない。
ただ、この職工ような人間は、神話が終わる時代には大勢居たのではないかと思う。
私は瞳子とほぼ同い年(というか瞳子が早生まれならタメ)なので、何者でもないことに怯える気持ちがちょっとわかります。
自分のアイデンティティをどうやって証明すればいいのか、わからない。
私が私だと胸張っていえるものは一体何なのか。
そう思うからこそ、最後のくくりはなんかほっとする。
何も見えなくても、相手が分からなくなっても、私の未来はまだこれから。
きっとビューティフルワールドが待っているのだと、信じることが出来る。
あとはぶくぷく茶!
なんてキュートなネーミング(笑)ぜひ一度飲んでみたいです☆
自分、食べ物ネタに食いつくこと多いなぁ…(^_^;)
本屋大賞候補作ですが、桜庭一樹は2作あるから票割れしそうだなぁー。
もうちょっとしたら予想順位を立ててお祭り気分で楽しみたいです(笑)
「私の男」はいつ来るのか…。
直木賞決まってすぐ学校にリクエストしたので、どうやら入手困難らしいです。
桜庭一樹は苦手なのと好きなので差が激しいので、何読むか迷います。
ラノベっぽくないやつを探して読もう…。
読了日:2008/3/22
スポンサーサイト
三者三様の時代背景を持った女性たちの物語。読み応えがありました。
瞳子とほぼ同い年!、いいなぁ~。
明るいビューティフルワールドが待っていますよ、きっと。
私も食べ物ネタに食いつくことが多いので、ちょっとうれしいです(悪影響!?笑)。
「私の男」もお楽しみに。
江國さんの「がらくた」の記事もありますよ。